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サラ・ウォーターズ 『荊の城』
![]() | 荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫) 著:サラ・ウォーターズ 発売日:2004/04/22 価格:987 |
![]() | 荊[いばら]の城 下 (創元推理文庫) 著:サラ・ウォーターズ 発売日:2004/04/22 価格:987 |
BBCドラマ版『荊の城』の日本語版DVDが発売されると知り、本棚の肥やしとなっていた原作小説・上下巻を読了。感想は書かないつもりだったけど、気が変わったので簡単に。致命的なネタバレはしてないつもりだけど、保証はしない。
面白いところはすごく面白いのに、退屈なところは死ぬほど退屈という極端な印象がまずある。展開の面白さはあるし、巧みな構成や緻密な伏線にも驚かされるものの、似たような情景描写が執拗なまでに繰り返しあらわれて冗長に感じられる。続きが気になってならない読者としては、欠かせない描写なのだとわかってはいても、おあずけを食らっている犬のような気分になる。とはいえ描写におけるこの厚みこそが作者の特徴なのかもしれず……
力がある小説だと思ったのは本当だ。なんといっても構成の美しさがある。最初から欺瞞と裏切りとによって関係づけられている二人の少女、いらだたしいまでの緊張状態、それでいて二人は惹かれあってしまう。同時に湧き起こる矛盾した感情が入れかわり立ちかわりし、しかしそれらはあくまでも心の内に秘められていなければならない。愛と憎しみ、信頼と疑心、喜びと悲しみ……その緊張関係がいよいよ限界を越えたかに見えたとき、驚いたことに今度は少女たち自身が入れかわりはじめる。物語を語る、一人称の主すらも。瞬間、誰が誰なのかが曖昧になり、どちらがどちらなのかが判別しがたくなり、そのとき二人の存在は限りなく重なりあい交錯する。そのとき「私」は彼女であり彼女は「私」なのだ。
第二部で描かれる、モードの複雑すぎる人となりにも息をのまされる。スウの目から見られた素朴で無邪気なお嬢様にすぎなかったはずのモードが一転、いびつなまでに屈折したまるで別人のような少女として立ちあらわれてくるのだ。たしかにスウが言うように──ただしスウとは別の意味でだが──、モードを愛さずにはいられなかった。モードがスウへ注ぐ愛情もまた、あまりにも複雑かつ臆病、つまりは不器用だからである。仮に二人がふつうに出会えていたとしても、モードが遠回りせずに思いを打ち明けられたかどうかというと怪しいものだ。
あとはやはり、余韻の深さだろう。いたずらにドラマチックにならず抑制されていて、それでいて心を打たれる結末。
ドラマについて思ったのが、主演女優がどう見ても17歳の少女には見えないということだ。BBC文芸ドラマで年端もゆかない少女に同性愛シーンを演じさせるわけにはいかない、とかいう配慮があったのかもしれないな。穿ちすぎ?
ともあれ出来が楽しみ。原作の展開をうまく取捨選択しつつ、誰もが楽しめて小説にも興味を持てるようなドラマというのが理想だろう。
アサウラ 『黄色い花の紅』 感想
![]() | 黄色い花の紅 (集英社スーパーダッシュ文庫) 著:アサウラ 発売日:2006/09 価格:680 |
以前レビューした『バニラ A sweet partner』(感想)の作者のデビュー作にして、スーパーダッシュ小説新人賞受賞作。
単純な比較になってしまうが、ガンアクション+(美少女+百合)という「売り」の部分は『バニラ』と重なりつつ、両者の比率は真逆であると思う。つまり、『バニラ』は銃撃戦と逃走劇をつうじて二人の少女の関係を描写することにウエイトを置いていたのに対し、こちらは銃撃戦を中心とする苛烈な戦闘描写がメインだという印象。
とはいえ、戦うことをとおして主人公の少女の精神的な成長を描き、また大切な存在である同性との絆が変化しつつ強まっていく様を描いている、という点では一貫している。
作者の確かな文章力もあって、個人的にはとても面白く、チラッと眺めたきり積んでおいた時間の長さに比べ、ほとんど一気に読みきれてしまった。たまに筆にまかせすぎというか、勢いまかせに書いているという印象を受ける箇所もあったが、その勢いと疾走感こそが魅力であるともいえるので、これはこれでいいのだろう。
ひとつ不満点を挙げると、個々のキャラクターの掘り下げがもうひとつ足りないと感じた。たとえば、紅花の葛藤、決意、昨日の自分のままではいたくないという意地……その辺りの心理描写の切実さは特筆すべきものがある。だがそれに比べて、紅花の「これまで」の部分の描写が弱いと感じた。その部分がしっかりとした土台として在ってこそ、そこからの成長もまた物語として力をもつのではないだろうか。
そこは他の要素とのバランスの問題だから、何に注目して読むかで評価も変わるのだろうが。
以下、ネタバレを含む感想↓
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[小説] アサウラ 『バニラ A sweet partner』

バニラ―A sweet partner
読了。とんでもない(ほめ言葉)百合小説だった。ガン・アクションとしてみても、ひきこまれる面白さがある。
この小説は、民間の銃所持などが合法化された直後という設定で、ある連続狙撃事件とその顛末を、犯人である二人の女子高生の視点から描いたものだ。
犯人の片割れである主人公・ケイと、その相棒であるナオは、それぞれの事情から家族関係が破綻しており、孤立してしまっている。偶然的な経緯から、狙撃銃をふくむ四丁の銃を手に入れた二人は、復讐を目的とした狙撃を繰り返す。やがて警察の手がせまり、二人は逃避行を開始する。一分一秒でも長く、お互いのそばにいるために。
この小説は、強い絆で結ばれた主役カップルがどうなってしまうのかと、ハラハラしながら読むのがよいと思う。ただ、結末部分のネタバレにならない範囲でよさを伝えるのが、なかなか難しい物語でもある。それなので、とにかく最後まで読んでみてほしいとしか言えない。
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[小説] 館山緑 「星の残像」 感想
星の残像(18禁)
http://kerorin.net/works/hosi/hoshi_doujin.html
読み終わった。最後の方は引き込まれて、一気に読んでしまった。奇妙な余韻の残る話。
全体的に暗い雰囲気で、ラストも物悲しい感じだけれど、鬱とかそういうのではない。途中で幽霊が出てきたりするのでホラーかと思ったら、別に怖い話でもないし、あえて分類するならミステリー?
10年前に行方不明になった叔母(当時高校3年生?)の紗奈について手がかりを捜すため、化粧坂女学館という女子校に転校してきた紗耶。紗耶は行方不明になった当時の紗奈と、瓜二つの容姿をしている。
この学校には、当時の紗奈の後輩と、紗奈の恋人でもあったという同級生という二人の女教師がおり、それぞれに紗奈に関する情報をくれたり、口では言えないようなことをしてきたりする。それから、紗耶がやってきたことで、化粧坂女学館には謎めいた事件が相次ぐ。身も蓋もない言い方をすると、生徒たちが夢(主に淫夢)と現実の区別がつかなくなり、精神的におかしくなっていく。その夢はおそらく紗奈が見せているもので、生徒たちは夢の中の紗奈に欲情しているのだけれども、実際に迫られたり襲われたりするのは外見が瓜二つの紗耶だという、ある意味迷惑な話。しかし、紗耶自身だけは惑わされることがないので、さまざまな事件の裏にある真相を探り当てていく。
以上のようなストーリーが幻想的な筆致で綴られていくわけだが、紗耶を取り巻く少女たちが夜ごとの淫靡な夢に狂わされていく、とかいえば謎めいてはいるけれども、要は美しい転校生のエロスなオーラに皆して欲情して暴走してるだけなんじゃ……と読み進めながら疑っていた。年頃の女の子たちが、禁欲的な寮生活では色々たまってくるだろうし、と。でも、ラストではちゃんと(?)その真相も明かされることになる。
意志が強くドライで、他の少女たちのようには夢を見ることがない醒めた主人公が、だからこそ愛していた叔母に会いたい一心で、人を惑わせる幻想の正体に近づいていく。けれど、そこで知らなかった叔母の痛ましい一面を知り、やがて彼女を醒めない夢の中に閉じ込めてしまったいわば夢の主とでもいうべきものと出会うことになるが……というようなお話。
あとがきによれば、デジタルノベルのテキストを改稿、再録されたものなので、純粋に小説として読むと若干気になる部分がある、かも。また、毎回必ずエロを入れることという縛りがあったと思うので、そこにいたる過程でやや唐突に感じることもあった。
とはいえHシーンは悪くない。個人的には、例によって頭が変になった同級生とその連れから紗耶が監禁されて、縛られてスティック糊で無理やり……っていうシーンがエロいと思った。趣味よくないですか、そうですか。でもその後の紗耶がショック受けてて可哀想だったんで、申し訳なくなったけどw基本的には道具とかほとんど出てこなくて、指と舌!指と舌!みたいなレズシーンで徹底してるし、男も一切排除されている。ただし恋愛要素は薄め。紗耶が恋を知るのも終盤だしね。
紗耶はあの後、寮に戻って肖子さんとラブラブ百合ライフを送ればいいと思うよ。まじめそうな寮長で、紗耶の色香にも興味はないって顔で保護者然としてたけど、ルームメイトになって内心穏やかじゃなかったはずだ!事に及んだときの初々しい反応にギャップ萌えでした。あと、紗奈の恋人だった先生がSっぽくてわくわくしてたのに、この人だけは紗耶と紗奈を取り違えたりしないので、手出ししてこなかったのが惜しかった。紗奈に愛されてる人は幻惑されないのかな。
あとがき読むと、この作者さんはかなりの百合好きらしい。吉屋信子の「乙女手帖」なんて名前がさらっと出てくる辺り、ちょっと尊敬。
http://kerorin.net/works/hosi/hoshi_doujin.html
読み終わった。最後の方は引き込まれて、一気に読んでしまった。奇妙な余韻の残る話。
全体的に暗い雰囲気で、ラストも物悲しい感じだけれど、鬱とかそういうのではない。途中で幽霊が出てきたりするのでホラーかと思ったら、別に怖い話でもないし、あえて分類するならミステリー?
10年前に行方不明になった叔母(当時高校3年生?)の紗奈について手がかりを捜すため、化粧坂女学館という女子校に転校してきた紗耶。紗耶は行方不明になった当時の紗奈と、瓜二つの容姿をしている。
この学校には、当時の紗奈の後輩と、紗奈の恋人でもあったという同級生という二人の女教師がおり、それぞれに紗奈に関する情報をくれたり、口では言えないようなことをしてきたりする。それから、紗耶がやってきたことで、化粧坂女学館には謎めいた事件が相次ぐ。身も蓋もない言い方をすると、生徒たちが夢(主に淫夢)と現実の区別がつかなくなり、精神的におかしくなっていく。その夢はおそらく紗奈が見せているもので、生徒たちは夢の中の紗奈に欲情しているのだけれども、実際に迫られたり襲われたりするのは外見が瓜二つの紗耶だという、ある意味迷惑な話。しかし、紗耶自身だけは惑わされることがないので、さまざまな事件の裏にある真相を探り当てていく。
以上のようなストーリーが幻想的な筆致で綴られていくわけだが、紗耶を取り巻く少女たちが夜ごとの淫靡な夢に狂わされていく、とかいえば謎めいてはいるけれども、要は美しい転校生のエロスなオーラに皆して欲情して暴走してるだけなんじゃ……と読み進めながら疑っていた。年頃の女の子たちが、禁欲的な寮生活では色々たまってくるだろうし、と。でも、ラストではちゃんと(?)その真相も明かされることになる。
意志が強くドライで、他の少女たちのようには夢を見ることがない醒めた主人公が、だからこそ愛していた叔母に会いたい一心で、人を惑わせる幻想の正体に近づいていく。けれど、そこで知らなかった叔母の痛ましい一面を知り、やがて彼女を醒めない夢の中に閉じ込めてしまったいわば夢の主とでもいうべきものと出会うことになるが……というようなお話。
あとがきによれば、デジタルノベルのテキストを改稿、再録されたものなので、純粋に小説として読むと若干気になる部分がある、かも。また、毎回必ずエロを入れることという縛りがあったと思うので、そこにいたる過程でやや唐突に感じることもあった。
とはいえHシーンは悪くない。個人的には、例によって頭が変になった同級生とその連れから紗耶が監禁されて、縛られてスティック糊で無理やり……っていうシーンがエロいと思った。趣味よくないですか、そうですか。でもその後の紗耶がショック受けてて可哀想だったんで、申し訳なくなったけどw基本的には道具とかほとんど出てこなくて、指と舌!指と舌!みたいなレズシーンで徹底してるし、男も一切排除されている。ただし恋愛要素は薄め。紗耶が恋を知るのも終盤だしね。
紗耶はあの後、寮に戻って肖子さんとラブラブ百合ライフを送ればいいと思うよ。まじめそうな寮長で、紗耶の色香にも興味はないって顔で保護者然としてたけど、ルームメイトになって内心穏やかじゃなかったはずだ!事に及んだときの初々しい反応にギャップ萌えでした。あと、紗奈の恋人だった先生がSっぽくてわくわくしてたのに、この人だけは紗耶と紗奈を取り違えたりしないので、手出ししてこなかったのが惜しかった。紗奈に愛されてる人は幻惑されないのかな。
あとがき読むと、この作者さんはかなりの百合好きらしい。吉屋信子の「乙女手帖」なんて名前がさらっと出てくる辺り、ちょっと尊敬。







