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BLUE DROP 〜天使達の戯曲〜 第12話 「Cosmos」 感想

脚本:高橋ナツコ
絵コンテ:大倉雅彦
演出:吉田英俊
作画監督:亜蘭純子・CHOI YOUNG-HEE・JUNG JI-HEE・服部憲知
いよいよ学園祭前日という朝、萩乃もようやく帰還する。劇の準備も大詰めを迎え、マリの祖母をはじめ各々の家族も顔を見せる。
一方で、侵攻本隊の出発を前に、なんとしてもBLUEを殲滅しなければならないシバリエル。だが事の真相を見抜いたアザナエルは、先遣艦隊のコマンダーが集まる席上で、神隠島での暴走事故がシバリエルによって仕組まれたことだったと糾弾する。BLUEは、エミルフォースドライブの暴走がもたらす影響を調べるための実験台にされたのだ。実際には、そこから得られる「思念凝結兵器」の検証のために。シバリエルがBLUEを葬ろうとする理由も、その事実を隠蔽するためだった。
シバリエルに復讐しようとするアザナエルだが、思念凝結兵器の前に太刀打ちできず、すんでのところでノヴァールを脱出する。
萩乃は菅原先生から、異星人の正体と目的を問い質されて、アルメの侵攻が目前にせまっていることを打ち明ける。はからずも、その会話を立ち聞きしてしまうみち子。
ファイアーストームの炎が夜空を照らす中、マリと萩乃は二人きりになって話し、和解する。
マリが萩乃をプールに突き落とした後、プールでキャッキャウフフ→「大好き!」(ハモって)→水中チッス……のコンボが強烈。登場人物のみならず見る者までも赤面させるとは。直前までのシリアスな雰囲気からの反転ぶりが凄まじい。
だが何より泡が邪魔すぎる。ただのプールのはずなのに、二人が顔を傾けてキスしたと思われた途端に、どこからともなく猛然と泡が噴き出てくるので笑ってしまった。きれいなシーンなんだけどね。思えばストパニでもファーストキスはプールだったと記憶しているのだけれど、なぜかとにかく足がつかない。深い。もしかすると「アニメの女子校のプールは底抜けに深い」という定石が存在したりするのかもしれない。
一方、二人のラブラブ具合を見守りながらしょんぼりと膝を抱えるツバエルがあまりにも可哀想。あれほど萩乃に尽くしてきて、でもやはり相手のためを思って身を引くというのが彼女らしさなんだろうけれど、冗談めかして口にした「少し、妬けちゃいます」の言葉には万感がこめられていたんだろうなぁ。
マリが萩乃を許すと同時にプールに突き落としてしまうという場面は、やはり神隠島事件の回想シーンとの符合を意識してしまう場面。五年前、二人が初めて出会ったときのように水中で見つめ合い、同じように手をつなぐという象徴的な構図、だが関係の変化によってもう一歩を踏み込んでいるという。
海、プール、雨から花瓶にいたるまで、とかく「水」の印象が強いアニメだとふと思う。もちろん涙も。
劇の準備の合間に、寮長が最後の学園祭を前にして述懐する場面。これが『櫻の園』の或るシーンを強く髣髴とさせるもので、あの長台詞を口にするのがみち子で、そばに桜が咲いていたら完璧だったのにと思ったが、とてもニヤニヤできたのは間違いない。
『櫻の園』の上品な、いってみれば淡い感情表現には確かに、このアニメと通じる面があると思う。逆にいうとこのアニメが好きな人なら、『櫻の園』もきっと気に入りそうに思える、もはや昔の映画なのがネックだが。
BLUE DROP 〜天使達の戯曲〜 第11話 「Thoroughwort」 感想

脚本:渡邊大輔
絵コンテ:大倉雅彦
演出:内田裕司
作画監督:CHOI YOUNG-HEE・JUNG JI-HEE・小枝マリ
BLUEを離れひとり、学園へ戻るマリ。学園祭も目前にせまり、劇の準備で周囲があわただしくなる中、稽古のさなかにも上の空のままだ。マリをはじめ真剣みの感じられない役者たちに、業を煮やしたみち子はついに怒りをぶちまけ、講堂を飛び出してしまう。
一方、破損したBLUEの中、涙にくれる萩乃。しかし彼女は暗がりのなかで、ふいにオノミルの幻影と出会う。生前と変わらぬ姿で微笑むオノミルは、泣きながら謝罪をくりかえす萩乃を、ただ優しく諭す。
神隠島事件当時の、亡くなった両親の様子を、思いつめた表情で菅原先生に訊ねたマリ。意を決したかのように、みち子を講堂へと連れ戻し、稽古を再開する。そこへ、シフトした姿であらわれる萩乃。ただ謝るばかりの萩乃にマリは、むしろその、すべてを自分ひとりで抱え込もうとする態度をこそなじらずにはいられない。
そのとき突如として、学園上空を横切っていくアルメの大編隊。侵攻本隊が集結を開始する中、事を焦るシバリエルの攻撃の手がBLUEにせまっていた。萩乃は「戻ってくる」と約束してマリと別れ、それらを迎え撃つ……
稽古のさなか、ふいに舞台上に姿をあらわした萩乃に、怒りとも悲しみともつかない複雑な表情を浮かべるマリ。それから人気のないプールサイドへと場所を移すのだが、この、夕焼けの光を反射してきらめくプールの描写がおもしろい。というのも、この水面には「目には見えないもの」が映し出されてしまうという、演出上の意図を読みとることができるから。
そのことを端的に示す場面がある。水面に映っているのは言い合う二人の影であるが、他の人々にはみえないはずの萩乃の姿もなぜか──おそらく物理的な説明も可能なのだろうが──映し出されてしまっており、それゆえ、あらぬ方角へ向けてひとり語りかけている(ようにしかみえない)マリを目撃して不審を抱いた菅原先生もまた、そこにいないはずの萩乃の存在に気づいてしまうのだ。
一方でマリは先生から教えられた、両親の最期の様子を淡々と話して聞かせる。が、萩乃と顔を見合わせることなく、俯きがちに話すその表情は、画面に直接にとらえられるよりはむしろプールの水面に映し出され、細かなさざ波や波紋が心の揺れ動きをあらわしているようだ。やがて激昂して顔を上げ、声をあらげたマリは、立ち去る萩乃を見送るさいにもその厳しい口調をゆるめることはない。だが萩乃がいなくなった後、ふたたび水面に映ったマリの表情はむしろ寂しげであり、萩乃とかわした約束をつぶやくように反芻する。マリがみずから表現できない内面を、プールの水面が映し出しているのだ。これもまた、「目には見えないもの」だろう。
そして、同じ夕焼けの下、唐突に学園の上空を横切っていくアルメの攻撃編隊には度肝を抜かれた。これまでけっしてまじわることなく、並行して描かれてきた二つの世界が、いきなり交錯させられる場面だ。ひたすらにのどかだった学園風景を、ふいに侵蝕する異質な存在の影。侵略者の存在がはじめて現実味をおびる瞬間でもある。
禍々しい無数の影が空を突っ切っていき、学園の生徒たちは意味もわからずただそれを見上げるほかなく、一方でマリと萩乃、そしてそれを見守る菅原先生には、それぞれに不吉な予感を投げかける。
さて、ノヴァールに帰艦したアザナエル。彼女の破壊工作が生んだ絶好の機会、これに乗じてBLUEを叩き潰そうとするシバリエルは、もはやなりふり構ってはいられないらしい。本格侵攻も間近に控え、いまやその顔つきは悪の親玉そのものである。本来ならば地殻破壊用の超強力兵器・メガボマーの使用準備を独断で進め、都合の悪いモノは何もかも吹っ飛ばしてしまおうという魂胆のようだ。
そうまでしてBLUEに執着するシバリエルに疑念を抱いたアザナエルは、調べるうちに「BLUE型エミルフォースドライブの爆縮によって副次的に生成される、思念波を凝結する物質」の存在に行きあたる。要は思念を凝結=具体化する物質、これを島民たち同士が殺しあったという神隠島事件の虐殺と関連づけることはたやすいのであり、つまるところエミルフォースドライブは萩乃が説明したように単に「暴走」したというわけではなかった。それを仕組んだ者がいたからだ。しかしアザナエル、真相を調べられるのなら、萩乃に仕返しする前にきちんと調べろよ!
ちなみに今回オノミルが登場したことも、この物質の存在から説明がつきそうだ。だとすれば、アザナエルの破壊工作がそれを引き起こしたのかどうかは定かでないにせよ、問題はこのオノミルが誰の思念を具体化させたものなのかということだろう。一種の幽霊なのか、それとも萩乃や他の誰かの思念が生み出した存在なのか?
ともあれ、修復途上であり姿勢制御すらままならないBLUEでメガボマーをしのがなければならない萩乃。そのギリギリまで追いつめられた戦いと、マリの熱演する舞台とが交差する中で、演じられる劇中劇がマリの心情に強くオーヴァラップしていく。涙を浮かべてジャンヌに語りかけるマリが、戯曲のセリフを通じて萩乃に語りかけているのは明瞭であり、このような演出には映画 『櫻の園』を彷彿とさせられた。
マリの「だからジャンヌ、もう一度!」に、爆発シーンが重ね合わされる場面がとにかく熱くて、「マリの強い一念がBLUEを窮地から救ったんだなぁ」とかひとりで感動していたのだが、実際にはオノミルが元オペレータの腕を発揮して助けてくれたということらしい。まあ愛で戦艦が動かせるなら、私の一念でもってこのアニメを2クールに延ばすことだってたやすいさ……
BLUE DROP 〜天使達の戯曲〜 第10話 「Cirsium」 感想

脚本:渡邊大輔
絵コンテ:福田道生・大倉雅彦
演出:神崎ユウジ
作画監督:水川弘理・土橋昭人
なんということをしてくれたのだアザナエルよ。これ以上ない絶好の時宜での復讐劇。萩乃の大切なもの、すべてをぶち壊しにして艦を去っていく際の哄笑が素敵すぎるんだが。ここへきて悪役(?)の面目躍如とは……見事である。
正直、扉を開けてくれと懇願しながら泣きじゃくる萩乃に萌えてしまったなんて言える雰囲気ではないので、心でそっと思うだけにしておこう。普段はクールな女の子がもうなりふり構わず必死になって、涙をボロボロ流しながら好きな子の名前を呼んで、なんていうか、こう……グッときませんか?
戯曲がついに完成し、台本が配られ、演劇の準備が本格化する。演出を担当することになったみち子による配役で、主役に抜擢されたマリと萩乃は、朱音や同じく劇に参加することとなった青海寮の面々とともに稽古に入る。前回の一件で、マリの萩乃に対する信頼は揺るぎないものになっていた。
そんな中、萩乃はマリをBLUEに招待する。以前からの約束を果たすとともに、ずっと言い出せないできた、神隠島事件の真相を打ち明けるために。
萩乃に連れられてBLUEに乗り込み、大喜びするマリ。だが一方で、この機に乗じようとするアザナエルがひそかに行動を起こしていた。
前触れもなく、BLUEのシステム全体に障害が発生。その対処に追われる萩乃とツバエルを尻目に、居住エリアに案内するという口実でマリを艦橋から連れ出したアザナエル。かつてはオノミルのものだった自室でアザナエルは、神隠島で起きた虐殺、マリから両親を奪ったそれが、萩乃の仕業であるとマリに告げる。アザナエルの思惑に気づいて後を追ってきたものの、締め出されて為す術もなく、扉を叩きながら激しく取り乱す萩乃。ツバエルがロックを破って扉をこじ開けた頃には、マリはすでに茫然自失の状態に。
逃走するアザナエルによって爆破され、海へ沈んでいくBLUE。部屋に残されたマリと萩乃。
萩乃にとっては、まさしく「天国と地獄」。この世の春ともいうべき幸せな時間を謳歌したあとで、いきなりどん底へ突き落とされるという落差に涙。アザナエルの演説を公開生中継されて、どんな気分だったか……あまりの衝撃にマリの眼の光が失せて、部屋に飛び込んできた萩乃に対しても何も反応を示さない場面が鬱すぎる!
また要所の演出が冴えわたっていて、沈没する戦艦の下降の動きがマリの心情にオーバーラップする中、その艦がとどめを刺されるように爆破されて、何度も何度も繰り返し青い光を閃かせている場面が強烈な印象を残した。まるでBLUEが泣いているみたいだ……
それにしても、萩乃がマリに見せた宇宙戦艦のドルフィンジャンプ、こんな絵を思いつく人の頭の中って一体どういう構造をしているんだろう? 波や水しぶきの描写がものすごく細かくて、信じがたいほどダイナミックで美しい映像だった。海面をイルカのように跳ねる船という絵面に意表を突かれたのもあって、口があんぐり開きっぱなしに。
さて、話は戻って、学園祭の劇の主人公に大抜擢されてしまったマリ。戯曲のモチーフからいえば案の定の配役なのだが、マリ自身の演技力はというと、これもやはり予想を裏切らない拙さ。前途多難に思えるが、ミッチーは残された時間でお芝居を無事に仕上げることができるのだろうか。
かたや、劇の準備の合間を縫うようにして、急接近している二人。ハサミで指先を傷つけてしまった萩乃の、その血液が白いのに驚くマリ。フォリメの目には異様に映るはずのそれに、マリは構わず口をつけた。ここで動揺する萩乃のアップではなく、その手もとを狙いすましたように映すのでもなく、むしろ素早く引きの絵にもっていってしまう慎ましさがこのアニメらしい。そこではなくその後の場面で、マリに巻いてもらった絆創膏を眺めて嬉しそうな萩乃の表情と、それにハッとするみち子の反応でもって、関係性の深まりを表現するあたりが見事。「なんでもないの」と答える萩乃の言葉と、全然なんでもなくなさそうなその表情のギャップも見どころ。
つづいて戦艦の上でもとにかくイチャつく。だがこれがあるからこそ、後半の展開が、アザナエルの怒りと二人の悲しみが映えるんだなあ……
萩乃がマリと一刻も早く和解できるといいなあとはもちろん思っているけれど、マリがあっさり許すとしたらそれも嘘だと思う。マリは神隠島事件によって多くのものを理不尽に奪われたわけだから。そのうえで学園に来られて、萩乃に会えてよかったと言ってはいても、マリがなくしたもの──両親、記憶、そして幸せに過ごせたはずの少女時代──は取り返しがつかない。そうでなければ、こんな性格の女の子が、お屋敷に閉じこもってずっとおばあさまと暮らしていたいなどと望んだはずがない。
むろん、アザナエルの話が悪意によって歪曲というか誇張されていたのも事実。BLUEの主機関からの漏洩物が原因だという事件の責任をすべて萩乃個人に帰するのもどうかと思うし、実際には事件自体が仕組まれたことという可能性もほのめかされてはいる。だけどそれはこの場合、萩乃自身が責任はあくまでも自分にあると決め込んだまま、マリにその辺を説得しようとしないのならあんまり意味がないだろう。
実際問題としては、事情を知るツバエルが仲裁するのが一番よさそうだけど、萩乃の罪責感は実はこの作品の主題のひとつであり、アルメという存在を代表して引き受けさせられているもののようにも思えるのだ。これから地球を侵略しようとしているアルメ、その罪を萩乃が先取りして負わされているとしたら、マリがそれをどう受け止めるかも、これからこの世界で起きることを何らかの形で先取りするのではないかと。
そしてアザナエル。オノミルが命を賭して守ろうとした艦を自らの手でもって沈めるほどに萩乃への憎しみに駆られている彼女はむしろ、単にアルメの側に立っているのみならず、毛嫌いするフォリメの少女すなわちマリとの対比を描くために置かれた存在のように見える。それによって、上の主題をよりきわだたせるために。
BLUE DROP 〜天使達の戯曲〜 第9話 「Lagenaria siceraria」 感想

脚本:高橋ナツコ
絵コンテ・演出:出合小都美
作画監督:上田幸一郎
五年前、神隠島事件の記憶。
見渡すかぎり死体だらけという地獄絵図の中、生存者の反応をたどって海に飛び込んだ萩乃。海の底へと沈んでいく幼いマリの姿。マリが伸ばした手を、萩乃がためらいがちにつかみ、やがて包み込むように握りしめ、二人が見つめ合った瞬間、すべてが爆発の白い光に染めあげられていく。抒情的で激しいピアノがこれまた完璧にかみ合わさって、鳥肌がたつほどに美しい場面だった。これが本当の意味での、物語の始まりだといえるだろう。
思えば萩乃にとって、これがまさに最初の、フォリメとの接触だったのだ。自分たちが引き起こしてしまった虐殺、その悲惨な結果に取り乱すばかりの萩乃が、半ばすがるようにつかみとった一縷の希望でもある。仮に事件の責任が萩乃にあったとして、マリひとりを守ったからといってその罪を贖えはしないのかもしれないが、それでも萩乃にとって救いはそこにしか残されていないのだろうから。まさに運命的な出会いだ。
しかしそれらのこと、本当のことを、泣きながら「助けてくれてありがとう」と繰り返す現在のマリに今さら打ち明けることはできず、けっして目を合わそうとはしない萩乃の悲しげな表情も印象的だった。
戯曲の完成が近づく中、学園祭にむけて演劇の準備が始まる。資材の下見と買い出しのため、マリと萩乃との二人が隣町まで出かけることに。
電車での遠出、にぎやかな町並み、物珍しい風景に子どものようにはしゃぐマリ。二人はすっかりうちとけあって、楽しい時間を過ごす。だがマリの提案によって、帰路は電車を使わずに歩いて帰ることにしたところ、途中でマリが足を傷めて歩けなくなってしまう。
間の悪いことに急な雨にも見舞われて、二人は道端の廃店舗の中で雨宿りすることに。夜になり、雨は激しさを増す一方、マリは買い出しの荷物すら置き忘れてきたのに気づいて、調子に乗って迷惑をかけている自分にひどく落ち込んでしまう。そんな気持ちを思いやる萩乃の優しさもかえって、マリの落ち込みに拍車をかけてしまうかのようだ。
そうしていつしか、身を寄せ合うようにして眠り込んでしまった二人。萩乃は眠りの中で、神隠島事件の際の記憶を夢に見て、その夢にマリが自身の特殊な能力でもって同調(?)する。事件の際、自分の命を救ってくれたのが萩乃であることを知って、涙を流して感謝するマリ。それに応えながらも、萩乃は浮かない表情を見せる。
一方で、二人の様子を始終モニターしていたBLUEの艦内では、アザナエルが激しい衝撃とともに萩乃への怒りに震えていた。名も知らぬフォリメの少女を助けるため、同胞であり部下であるオノミルを見殺しにしたと思しき萩乃への……
「終わりの始まり」とでもいうべき展開。みち子の書く戯曲がマリと萩乃との関係にオーバーラップしていく中、マリが失われた過去の断片に触れ、ストーリーが核心へと近づきはじめる。生徒名簿を調べるうちに、萩乃の項だけにプロテクトがかけられていることに気づいた菅原先生が、その正体に行きあたるのも時間の問題だろう。
クライマックスへの期待とともに、一抹の寂しさも感じる。自分でも意外なほど、このアニメの作品世界に愛着を覚えてきていたみたいだ。公式サイトのクロニクルを参照するに、BLUE DROPの世界観からいえばこのアニメ自体が端緒をひらくものなので、逆に始まりの終わりが近づいているのにすぎないともいえるのだが。
さて、みち子が書いているお芝居、これがあらすじを聞くだけでもなかなか面白そう。美麗なイメージイラストの力も大きいが。
中世ヨーロッパが舞台かつ有名な史実がモチーフになっているというので、スケールが大きすぎないかと最初は思ったものの、主人公とジャンヌとが閉じ込められている牢獄の周辺に舞台を限定することにより、登場人物もセットも最小限ですみそうな、学園祭で行われる劇の規模としても手ごろなものに収まっているようだ。熱のこもった言葉でもってその戯曲の内容を語って聞かせるミッチーはいつもとは別人のようであり、そのお話がみんなから認められたという驚きもきっと彼女にははじめての経験で、先生やマリの応援も無駄にはならなかったようである。
だが果たしてこの劇、無事に上演されるのだろうか?
その劇の準備にあたって、隣町まで出かけていくマリと萩乃。マリにとってはおそらく初めて訪れたのだろう大きな町、傍らには萩乃がいることもあってかひとしきりはしゃいで、本来の目的をよそにふたりお嫁さんごっこをしてみたり、お茶したり、観覧車に乗ろうと誘ってみたり、歩いてゆっくり帰りたいとわがままを言ってみたり、キャッキャウフフしながら並んで走ったり、どう見てもデートです。もっと見せつけてください。
またその姿を、「自発的な作戦行動」と称してずっと見守って(覗いて)いるツバエルと、その傍らで逐一ツッコミを入れていくアザナエルのコンビが笑える。マリたちの現状の説明役を果たしてもいたわけだが、あんまりいい趣味とはいえないな。
そんな中、異星人をおそれないマリのことを不思議がる萩乃に対し、彼女のこともBLUEのことも、出会う以前から知っているような気がしていたのだと打ち明けるマリ。萩乃を一目みて惹かれた理由、異星人の存在をいともたやすく受け入れた理由も、ここら辺にあるのかもしれない。少なくとも失われた記憶は根こそぎにされたのではなくて、マリの中におぼろげながら残っているのだろう。
そんなマリに対し、アルメが地球へやってきた目的──彼女たちの軍機にもあたる──を打ち明ける萩乃。アルメが女性のみからなる種族であり、女性同士で生殖が可能という設定が本編で語られたのは初めてのことだと思う。マリがどんな反応をするかとヒヤヒヤさせられたわけだが、まあ案の定というか、本人はぐっすり眠り込んでしまっていた。起きていたとしても、「セイショクって何?」とかかましてくれそうな気がするが。
それでも萩乃は、マリがどう思うかを知りたかったのではないだろうか? このままでは滅びるしかないとわかっている自分たちが、かといって地球を侵略してもいいのかどうか……フォリメの生態、フォリメの世界を壊してまで。マリはもちろんイエスとは言わないだろう、言えるはずがない、そんなことはわかっている。打ち明けてもどうにもならないことは、萩乃自身が一番よく知っていたはずだ。ただマリが答えをくれるかもしれないという、そんな一抹の期待もあっての告白ではないだろうかと。
でも萩乃の中では答えが出ているのだともいえる。死にかけたマリを救うため、ひいては自分自身をわずかでも罪から救うため、同胞に背を向けてしまったそのときにはすでに。
ところで、マリの特殊な能力──接触テレパスの発動は、明らかにマリの精神状態に左右されているように見える。ひとしきりはしゃいだ後で極端に落ち込むというような、感情の起伏の激しさが、発動したりしなかったりにも影響を与えているのではないか。
ともあれ、その力でもって過去の一端だけを知られてしまったことにより、萩乃が苦しい状況に陥ったことには間違いない。マリはそもそも、神隠島事件の原因が津波という点を疑ってもいないし、そこになぜ萩乃が居合わせたのかなども疑問にすら思っていなくて、要は事件を引き起こした責任がアルメの側にあるなどとは思いもよらない中で、萩乃にただ感謝しているのだから。
BLUE DROP 〜天使達の戯曲〜 第8話 「Hyoscyamus niger」 感想

脚本:渡邊大輔
絵コンテ:長尾粛・大倉雅彦
演出:吉田英俊
作画監督:午来隆行・今村麻美
先生! ミッチーの頭の検査を要求します!
倒れたときに頭を打ったせいなのか、一時的にツバエルのシフト中の姿が見えるようになった、もしくは幻視したというのはなんとかありそうな話だとも思えるが、突如としてひらめいたあの絢爛たる妄想ヴィジョンは一体。明らかに打ちどころが悪かったのだと思うが……
ともあれあのヴィジョン、私の目には、「だまされてアルメにさらわれていく若竹さんの図」にしか見えないのだった。実際、人の言うことを鵜呑みにするマリを言葉巧みに誘拐するのはさして難しくないように思えるので、マスターコマンダー・シバリエルも一度、正面からではなくそちらから攻めてみたらどうか。
学園祭で行う演劇のための脚本執筆が思うように進まず、悩むみち子。菅原先生やマリたちの期待も、今の彼女にとってはプレッシャーにしか感じられない。追いつめられたみち子はついに、書き置きを残して学園を逃げ出す。
残された原稿から、脚本がまったくできていないことを知ったマリは、みち子を心配して彼女の実家を訪れる。だが、当のみち子はひと足はやく逃げてしまった後だった。
短い逃避行の後、先生のもとへ戻ったみち子は、苦しい胸の内を明かして気を失ってしまう。結果としてみち子に負担をかけてしまったことを悔いる先生。だが医務室で目覚めたみち子の目にふと、窓から見えるマリたちの姿が映る。その情景から突如として、脚本のアイディアがひらめくのだった。
一方、拘束されているアザナエルに対し、一定行動の自由を与えると言いだした萩乃。危険だと反対するツバエルを、閉じ込めておく理由がないし、そもそもBLUEはアザナエルの恋人であるオノミルが乗っていた船なのだからと諭す。オノミルの部屋、そしてオノミルが最期を迎えた場所を目の当たりにして悲しみと怒りとをあらわにするアザナエルに、ツバエルは、オノミルが命を落とした際の記録映像を見せた。
奇しくも、求めていたアイディアが天啓のようにひらめくことを「天使が降りてくる」という。今回、この物語における天使たるアルメ──ツバエルが、みち子にそれをもたらしたのだ。言葉遊びじみた符合ではあるが、ツバエルの存在を姿は見えないながらに感知したらしいみち子はまさに「天使が降りている」状態であり、きっといい脚本ができるだろう。
このアニメの副題ともなっている「天使達の戯曲」からも想像されるように、みち子の書いている戯曲が作中で重要な役割を果たすことはほぼ間違いなく、したがってそのおおもととなるアイディアがこのような経緯から、またマリと萩乃の関係をモチーフにして生まれたというのは、意味深いことだ。
しかしいつものことながら、あの渾身の素敵イラストは捨て身のギャグなのか、それともスタッフ的には大まじめなのかという点で判断に困るなあ。ちりゅうぞんびさんという漫画家の方に、わざわざ依頼して描いてもらったみたいだし。とにかく素晴らしいインパクトでした。
ともあれ、生みの苦しみ、創作の苦しみ。どうしても書けないと悶え苦しむ様、なりふり構わず逃げまわる様、それからふとした瞬間に天から降ってきたようにひらめきが訪れる様……脚本家自身の経験も多分にいかされていそうなエピソードであって、ものをつくったことがある人には多少なりとも思い当たる節がある話だったのではないだろうか。
コマンダーがフォリメに感化されすぎていると案じていたツバエルが、その心情をなんとなくでも理解するようになるという描写。また、夏休みの出来事などを経て自然と仲良くなっていっているマリと萩乃との描写などが差し挟まれつつ、これまで留保されていた戯曲の方向性がついに決定づけられた。
ここ最近は各話で朱音、寮長、みち子の人となりが知れるようなエピソードを展開しつつも、地道に人物描写と伏線を巡らしてきていたのだが、今後はそれらがクライマックスへ向けて収束していく形になるのだろう。
個人的には、マリを襲撃した者の正体を探っている菅原先生の動向も気になる。レーダーに感知されない航空機を運用できる相手、そこから敵が異星人である可能性に気づけるというのは、切れ者なのか変わり種なのか何なのか……結論を出しかねて考えあぐねる先生のもとを、時を同じくして萩乃が訪れる場面はどこかシュールである。
また、オノミルの命を奪った事故の詳細──エカリルの艦を守るため、エミルフォースドライブの暴走を食いとめようとして爆発に巻き込まれたことも明らかに。
その際、オノミルが最後にコマンダーへ伝えようとしたこととはなんだったのだろうか。エミルフォースドライブの暴走は、単なる事故ではなく、艦の構造自体に原因があったというふうに受け取れたのだが、結局ほかの乗員はそのことに気がつかないままだったのだろうか。それではまた同じことが起きる危険もあるし、何より暴走があらかじめ仕組まれたものだったのではないかという疑いを持つこともないわけだ。
オノミルを失ったアザナエルもまた、事故の原因に疑いを抱くことはなく、しかもあからさまに怪しい行動を取っていて、おとなしく拘束されたこと自体にも裏があるようだ。何かきなくさい流れになってきた。
BLUE DROP 〜天使達の戯曲〜 第7話 「Crinum」 感想

脚本:吉富昭仁
絵コンテ:瀬藤健嗣・大倉雅彦
演出:浅見松雄
作画監督:蘇武裕子・早川ナオミ
Crinum──けがれない心。その花の名の由来は、ギリシア語のKrinon(百合の一名)から。
第7話、原作者の吉富氏が脚本を担当されるというので個人的に注目していたのだが、すみずみまで計算されたまるでお手本のようなシナリオだった。ありふれた夏休みのひとコマをここまで面白く見せられるというのが驚きだ。水着! 風呂! 百合! と押さえるべきを押さえつつ、手堅いなかにも巧みに差し挟まれていく意外性が随所で光っている。ストーリーはいったん留保して、氏の思うようにやってもらったという印象だけれど、演出にも作画にもやたらと力が入っており、スタッフの意気込みが感じられた。
にしても、なんでこんなにうまいのか。アニメの脚本と漫画とでは求められるものがずいぶん違うように思えるが、ある面では共通する技術が要求されるのかもしれない、つまりお話を作るということにおいてだが。
夏休み、船津丸寮長の実家を訪れるマリたち。引っ越しの手伝いを兼ねて遊びにきたのである。
一行を迎えたのは寮長の姉であり、いま彼女は長女につづく第二子の出産を控えていた。マリたちは、寮長の姪にあたる赤ん坊を物珍しく眺める。とりわけ萩乃の目にはそれが、まるで未知の生物のように映った。
さっそく水着に着替え、海水浴にむかうマリたち。少し離れた岩場まで泳いで行ってみようと萩乃を誘ったマリだったが、天候が急に悪化しだした一方で、なかなか海から上がってこない萩乃にひどく心配させられる。しかし萩乃の姿を見つけて安堵するなり、またとげとげしい態度を取ってしまうのだった。
そうして台風が近づく中、寮長の姉が産気づいてしまい、寮長が病院まで送っていくことになる。寮長が戻るまで赤ん坊の世話を任されたマリたちは、様々なハプニングに見舞われつつ、オムツ替えにミルクに(頼まれてもいない)お風呂にと奮闘する。
姉の子どもが無事に産まれた後、みち子との電話で、預けた姪っ子の生命の危機を察知した寮長は、血相を変え、土砂崩れによる通行止めをも乗り越えて帰宅する。だが、その頃には赤ん坊もその世話に疲れた友人たちもすっかり寝入ってしまっていた。
そこには海でのいざこざなど何もなかったかのように、赤ん坊の布団で一緒になって眠るマリと萩乃の姿もあった。
まず序盤、前回の予告における「未知なる少女」の思いもよらない正体に吹きだしてしまった。"少女"じゃない、それ少女じゃないから!
ただ、赤ん坊とマリとの寝顔に「眠ってると可愛いんだけどね」とひとりごちて微笑む萩乃を見るかぎり、「アルメにとっては未知なる存在と映る、純真無垢な彼女」の部分が二人に掛かってくることを狙ったのかもしれないな。実際、萩乃の手におえないもの、未知の存在という意味では似たようなものではないだろうか。
いつにもまして、萩乃に対する逆走ぶりに拍車が掛かるマリ。萩乃が海で溺れたと思い込んで泣きながら捜していたくせに、見つかったとなれば食ってかかり、「もう、知らない!」「べつに、あなたを心配してたわけじゃないんだからねっ!」と非常にわかりやすいツンデレっぷり。
一方で、泣きじゃくるマリを実はしっかりと目撃していた萩乃、ひとりお風呂でその姿を思い浮かべて思い出し笑い。普段ツンツンされているだけに、心配されて嬉しかったのだろうか。人目がないのもあり、いつになくニコニコしているのがやたらと可愛いのだった。
だがそこへいきなり、素っ裸の赤ん坊を抱えて踏み込んでくる当のマリ。あっけにとられて見上げる萩乃に、
「ちょっとさ、お願いがあるんだけど!」(命令口調)
昼間は萩乃の水着姿に目が釘づけになっていたくせによく風呂場になんて入ってこられたなと驚いたが、考えてみれば寮には共同浴場があったから、裸ぐらいは見慣れていそうなものなんだよね。だがノックぐらいしろ。それから二人して赤ちゃんをお風呂に入れ、ミルクをあげ、しまいには一緒の布団に(おそらく川の字になって)寝てたって、一体どんな子育て風景ですか。
いつのまにか「萩乃」「マリさん」と名前で呼び合っているあたりも含め、この人たちを見ているともうニヤニヤがとまらない。翌朝、目を覚ました二人が、赤ん坊のいなくなった布団で同衾していたことに気づいてどう反応したかがすごく気になる。
家庭環境を考えるに赤ん坊なんてろくに扱ったこともなさそうな連中が勢揃いする中、異様に生々しい存在感を放つ赤ちゃん。ウンコしたりミルクもどしたり、ホント恐ろしい生物だな……正直、ミルクを飲ませた後にゲップさせてあげないと吐いちゃうなんて、今回で初めて知った。親戚には赤ん坊がいないこともなかったが、もちろんこの私に子守をさせるような真似は断じて誰もしないわけで。
しかしゲロ。テレビアニメで目をうたがうばかりの鮮烈な嘔吐。あまりのことに爆笑してしまったが、赤ん坊のだしミルクだし不潔感はない、とはいえ漫画でも突発的な嘔吐シーンが描かれてなかったっけ。吉富氏の好みなのか? そんな嗜好がありうるのかどうか知らないが……
さて、萩乃が楽しい休暇を過ごす一方で、拘束されたアザナエルを監視しつつBLUEで留守をまもっているツバエル。「コマンダーには休息が必要」と、我が身もかえりみず気づかう健気な姿が涙をさそう。ツバエルの愛は深いなあ。でも奥深すぎて肝心のコマンダーに伝わっていない……
と思いきや、夜更けにコマンダーから呼び出されたツバエルは、思わぬ贈り物をうけとることに。海にもぐってマリに心配をかけた理由──私はてっきり、萩乃はあの貝殻をマリのために取ってきたものとばかり思い込んでいたのだが、なるほど実はツバエルにあげるつもりだったのか。
鳥型ロボットを介して連絡を取っていた際、「安心して休暇を過ごしてほしい」と告げて去るツバエルを萩乃が見送るという場面の意味深な間、あれがここへきて符合したわけだ。何くれとなく尽くしてもらっていることに対して、萩乃なりに日ごろから感じるところはあったのだろう。
真っ赤になって「ありがとう」とだけ告げ、逃げるように走り去ってしまう萩乃、これが一瞬、意識が遠のくほど可愛かった。ツバエルでなくとも100人中100人が「惚れられてる?」と勘違いするであろう乙女っぷりである。純粋な感謝の表れとはいえ、これではむしろ罪作りなのでは。
半面、ツバエルの思いやりに応えるその感謝こそが、人間性を解しつつある萩乃の変化を示しているのだとも思う。萩乃は何か浮世離れしているというか、まあ異星人ゆえ当たり前かもしれないが、どこか超然として無機的な印象があった。それが、彼らがよぶところの「フォリメ」との接触によって決定的に変わりつつあるという描写なのだろう。
にしても、貝殻にまつわる印象的なエピソードというのは神無月の巫女からストパニへ受け継がれ、ここへきて百合アニメ史における一種の伝統になりつつあるのだろうか。隠喩的なエロスはもちろんのこと、尽くす愛+貝殻=レズレイプフラグという公式化も想定される。
どうせならエロコス姿の萩乃がツバエルに押し倒される展開を希望したいところなのだが……うはっ、ない! ない!
BLUE DROP 〜天使達の戯曲〜 第6話 「Campanula」 感想

脚本:白井宏旨
絵コンテ:羽生尚靖
演出:久米一成・友田政晴
作画監督:服部憲知
花火大会の喧騒と打ち上げられる花火と、その裏で繰り広げられる大規模な空戦。闇と花火の轟音と色鮮やかな光とが夜空を覆い隠して、激しい戦いもまた人々の目にはそれらの飛沫としか映らない。戦闘と祭りとが密かに隣り合わせとなって調和する、美しい情景。
こんなユニークな戦闘シーンが見られるとは。
夏休み前の期末試験。学年トップの座を萩乃から奪取すると宣戦布告し、自信満々のマリ。だが化学で赤点を取ってしまい、夏休みを返上しての補習を回避するべく、追試にそなえての勉強を菅原先生からみてもらうことになる。
学園生活がはじめてという自分を何かと気にかけていてくれ、親身になってくれる先生に、マリは次第に特別な気持ちを抱いていく。そして海王市の花火大会が開かれるのを知り、「追試に受かったら一緒に花火を見にいく」という約束を取りつけるのだった。
一方で、第5艦・BLUEに反逆の意図を認め、これを侵攻本隊が到着する前に排除すると宣言したシバリエル。第3・4艦が連携して攻撃するという作戦を実行に移した。
花火大会の夜、武装解除命令とともに指定された位置へとむかったBLUEは、そこで襲撃を受ける。それらをしのぐも、すべてが囮であることに気づく萩乃。敵戦闘機群に紛れるようにして、アザナエルを乗せた小型艇がマリの捕獲にむかっていた。
偶然、先生が神隠島事件の真相に近づくカギとして自分を監視していたことを知ってしまい、怒りと悲しみをあらわにするマリ。だがアザナエルの襲撃に際して先生は、マリの監視とともに警護をも請け負っているのだと告げ、マリを守ってそれに立ち向かおうとする。駆けつけた萩乃によって窮地から救われ、その帰り道で先生と和解するマリ。萩乃はアザナエル機を撃墜し身柄を拘束した。
一方でツバエルが、ビーム砲による遠距離からの精密射撃でもってエルボルーを撃退。作戦失敗とみるや撤退を命じるシバリエル。BLUEから「武装解除命令には応じない。以後、独力で行動する」との旨の電文を受け取り、怒気にみちた笑みをもらす。
冒頭、学年トップの萩乃に宣戦布告しておきながらしっかりと赤点をゲットしてくれたマリは、決して期待を裏切らない子。とはいえ転入するまでは家庭教師が付いていたというだけあって勉強自体はできるようだが、そもそも物理と化学の区別がついていなかったとかもうね……
内閣安全調査室の調査官という肩書きだけをまとって、これまで蚊帳の外におかれていた菅原先生。これを機にマリとの距離を縮めて揺さぶりをかけてくるかと思いきや、何か煮えきらない態度である。問題はマリ。先生の思わぬ優しさに触れ、しきりに頬を赤らめ、肩を寄せて勉強を教えてくれる横顔に見とれては叱られ、あげく花火大会デートの約束にこぎつける。いくぶん戸惑いながらも、むろんマリの好意を拒むことはない先生。
次回予告の「菅原裕子に惹かれていくマリ」なんて釣りだろうとたかをくくっていたのに、何このただならぬ雰囲気。花火大会なんて、好きな人と行きたいランキングの上位に食い込むだろう一大イベントなのに、ヒロインたる萩乃なんて思い出しもしないどころか女教師に自分からお誘いとかやってくれる! いいえ師弟愛です、師弟愛ですとも、マリは大人の女の包み込むような優しさにちょっとだけグラッときちゃっただけでホント……禁断の課外授業、ハニートラップ、峰不二子……ああ! ど、どうしよう! どうしたらいいの? (←萩乃派)
しかしみち子たち仲間から誘われれば同行しようと考える辺り、マリが先生を実際にどう思っていたのかはいまいち定かでない。
ともあれデートを前にして先生の正体がばれてしまい、マリに拒絶されたのもつかの間、身を呈して守ろうとしてくれた先生とマリはふたたび心を通わせ、涙ながらに抱き合うのであった。なんていい話……感動した! どう見ても先生ルートに分岐したように見えるとか、気持ちが昂るあまりあの後ふたりはどうにかなっちゃったんじゃないかとか、邪な目で見るのは禁止。気のせい。マリのひたむきさが先生の心を変え、先生の思いもまたマリに伝わったんだよ!
マリはきっと、そこにいるだけで庇護欲をそそるタイプなんだろう。なぜか世話を焼かずにいられないという。萩乃や先生には特殊な事情があったにせよ、第1話からすでにミッチーを振り回していたしね。それはいいんだけど、このままマリが各方面でフラグを立てまくっていく展開だったらどうしよう。それは複雑だ。とにかくマリには油断ならないということがよくわかった。
少なくとも今回の話は、今後、先生がマリたち生徒や異星人とは別のアプローチでストーリーに絡んでいくための段取りだととらえられる。誰もが何も知らないまま、疑いすら抱かないまま、異星人側の侵攻本隊が到着してしまったのではお話にならない。今回マリが何者かに狙われていることを知ったのだから、主に神隠島事件の真相にはじまる謎の部分に先生個人が介入してくると予想。
先生とエージェントとのやり取りからわかることとして、政府は神隠島事件において島民同士の虐殺が起きたと考えていること(他に考えようもないだろうが)、そして島を襲った津波が「ありえない局所的な」ものだったと調べをつけていること、がある。マリが埠頭で襲撃された件も、形跡だけは押さえているようだ。要するに何もわかっていないんだな。
津波が自然的要因でもって発生したのでないのはわかるとしても、では何が原因かと考えてみると確かによくわからない。エミルフォースドライブとやらの暴走の結果として具体的に何が起こったのか、暴走の原因は何か、それらをまずは知る必要があるなあ。いやそもそも萩乃の、事故に関する説明が事実という保証もないのだが。
てっきりアザナエルは終始、萩乃に敵対しつづけるよう宿命づけられているものと思っていたので、ここへきて萩乃に身柄を拘束される展開は意外すぎた。
萩乃にはまだ余裕がありそうだ。シバリエルの陥穽を見抜いてすぐさまマリのもとへ向かうあたり、優先順位がはっきりしているといえばそうだろうが、いつもながらBLUEをツバエルにまかせて離れることができるというのは信頼そして余裕の証と取れる。艦が撃破されたらもうどうにもならんわけで。まあ、置かれている立場の深刻さに比べ、切羽詰った姿というのが想像しにくいキャラではあるのだが。
何より、ひとりで追々試を受けているマリのもとへわざわざ忍んできて、からかったりしているくらいだからなあ。何をしているんだ。マリのリアクションがおかしくて涙が出るほど笑っている姿、萩乃の新しい一面を見た気がした。可愛らしい。
BLUE DROP 〜天使達の戯曲〜 第5話 「Garden verbena」 感想

脚本:小枝マリ
絵コンテ:静野孔文
演出:内田祐司
作画監督:粟井重紀
日常と非日常──平和な学園生活のなかで持ち上がった些細だがこみいった出来事と、宇宙戦艦同士の派手な戦闘──が目まぐるしいまでに交錯して描かれることによって、このアニメの一貫したねらいが浮き彫りになってきたように思える。面白い。
ひときわ異質なもの同士が、反発しつつも最終的には歯車がぴったりとかみ合わさるように融和させられうるのかどうか。日常と非日常、学園風景とSF、地球人と異星人、マリと萩乃……
そう考えていくと第1話冒頭の会話も、言外の意味を持ちはじめる。
萩乃はマリに、自分の正体を明かした。その説明には今ひとつピンとこないながらも、案外すんなりとそれを受け入れてしまうマリ。
「ノヴァールのプローブが行方不明になった」との報告をシバリエルから受ける萩乃だが、マリが襲撃された件についてはお互いにしらを切る。その一方でシバリエルは第2艦・ケルビルーへ、BLUEを撃破せよとの命令を下した。
そのケルビルーからの奇襲を受け、艦体に損傷を負うBLUE。ツバエルからの報告を受けた萩乃は、みずから指揮をとり同胞の艦であるケルビルーと交戦することを決断。再度の砲撃を待ちかまえていたBLUE、敵艦の直上へ転移して体当たりをかますという作戦でもってケルビルーを撃退する。
一方、じつは朱音の離婚した実父であった学園長が倒れ、病院へ運ばれてしまう。その複雑な親子関係をめぐる朱音、そしてマリたちのやり取りを目の当たりにして、人と人との絆なるものを意識しはじめる萩乃。
前回の一件のせいで、マリに正体を隠しておけなくなった萩乃。せいぜいサンタさんの正体を知ってしまった子ども程度のリアクションしか示さないマリと、マリが気にくわないらしいツバエル、そして何を照れているのかしきりに頬を赤らめる萩乃の対比が可笑しい。
そこへマスターコマンダー・シバリエルからの通信が入る。会談に応じるも、シバリエルと互いに腹の内を探りあう萩乃、ここでは顔色ひとつ変えない。シバリエルはしきりに萩乃を試しており、ケルビルーを差し向けることによってエカリル=萩乃の「覚悟のほどが知れよう」とも言っているが、すでにその謀反の動機には見当をつけているのだろうか?
萩乃は地球への侵攻に先行しての調査に参加してきたわけだが、現在はさておき神隠島事件より以前、そのことについて個人的にはどんな意見を持っていたかというのが気になる。地球へ侵攻することになる異星人たちが、もとから一枚岩だったのかどうかってことでもあるが。
萩乃はつねに飄々としていて、シバリエルはもちろんのこと腹心の部下であるツバエルにも心中を明かしていないと見うけられたり、緊急時においても校則・寮則の類を遵守する度を越した律儀さだったり、それでいて完璧と評される一方で何かしらの欠如も感じさせたりと、今のところ何を考えているのかわからん人。異星人、コミュニケーションが可能なのかどうかもわからない存在、そんな他者として描かれているのならむしろ、わからんままなのが良いのかもしれないが。
学園長を見舞うため寮を脱け出そうとする朱音、そしてそれを応援するマリたちの行動を理解できないでいる萩乃に、「あなたにだって、ひとつぐらいは大切にしているものがあるでしょ?」と目に涙をためて問いかけるマリには、そもそも相手は異星人なのだからわかりあえないかもしれないなんて思いもよらないのだろう。オノミルを愛するアザナエルのような例もあるので、異星人というより萩乃とのギャップというべきかもしれない。朱音の家庭事情にも、みち子が脚本を依頼されたという話にも、マリは「頼まれてもないのに他人の問題に首をつっこんでいいのか?」とかいった躊躇なんてなしに踏み込んでいく。他者との距離などないかのように。良し悪しは別にしてそれがマリなんだろうけど、これが今後どう働くか。
ともあれ朱音の親子話じたいはベタなんだけど、それをきっかけに、考えてもみなかった「大切なもの」の存在をはじめて意識する萩乃、という場面が印象的だった。
しかし、今回の個人的な見どころはやはり戦艦同士のバトル。うっちゅーうせんかんやーまーとー♪
ケルビルーの砲撃って要するに、発射した超デカい氷のカタマリをワープさせて、BLUEに撃ち込んでたんだよね? 砲弾がワープしてきて、空を覆っていた雲がサッと吹き飛び晴れ間がのぞく場面、そこからのBLUE反撃がカッコよかった!
個人的にはケルビルー艦長・カサゴルのロリ可愛さと、ツバエルの揺るぎない忠心もポイント高し。
BLUE DROP 〜天使達の戯曲〜 第4話 「Dahlia pinnata」 感想

脚本:高橋ナツコ
絵コンテ:吉田英俊・大倉雅彦
演出:神崎ユウジ
作画監督:成松義人・水川弘理・八木元喜
主題歌CDをヘヴィーローテ中。とくにOP曲が大好きだ、なんという鳥肌ソング。歌詞がとても切ない。大倉監督みずから作詞されたということで、本編の展開とも深く関連していそうだが……
ところで、人がいないときにED曲に合わせてあの「るんるん♪」走りを真似してみたんだけど、案外楽しいとはいえひとりでやってもむなしいような気もした。
次の朝がきても、寮の部屋へは戻らない萩乃。のんびりと休日を過ごしつつもやはり元気のないマリ、そしてみち子を、町へ連れ出して行きつけのレストランへむかう朱音。おいしい食事で楽しい時間を過ごしたのもつかの間、朱音の顔見知りらしいチンピラに絡まれ、路地でケンカに。マリは、チンピラの車に引きずり込まれそうになったみち子を助けようとするが、勢いあまって自分が拉致されてしまう。
一方で萩乃は、艦隊の司令・マスターコマンダーであるシバリエルと会合していた。「エミルフォースドライブ」の暴走による五年前の事故がもたらした甚大な被害と、なぜかそのエミルフォースドライブの影響を受けないフォリメ(=マリ)について報告。シバリエルはマリに、ことのほか強い関心を示す。
マリは倉庫が立ち並ぶ埠頭へ連れてこられるが、そこへシバリエルが差し向けた対人プローブが出現。チンピラたちが逃げまどう中、巨大なその姿をぼう然と見上げるマリは、プローブの触手に捕らえられて絶体絶命のピンチ。
そこへ颯爽とあらわれ、プローブを撃墜してマリを救い出す萩乃。萩乃に抱きつき、泣きながら「怖かった」と訴えるマリ。
マリがチンピラどもに拉致られてあわやと思いきや、そのチンピラを蹴散らして今度はいつの間にか触手に捕まっており、なんらかのプレイがはじまりそうという危機にコマンダーこと萩乃が駆けつけて、好感度と見せ場とをかっさらっていきました。スゲエ展開……
萩乃が出会いがしらに首を絞めたというので険悪になっていた二人、ここへきて一応の仲直り。それがまた、触手から助けられてのことというのは、どういえばいいのか、とてもアブノーマルな関係です……
マリがチンピラ相手にきめた鮮やかな膝蹴りが目にやきついていたので、一瞬、マリなら触手くらい倒せるのではないかと期待してしまった私。対人プローブ→触手装備ってのがさらに衝撃的だったのだが、異星人はいったい何を考えているのだろうか? そういえば第2話冒頭、マリの夢の中で萩乃が触手を伸ばしてくるという場面があったけど、あれも現実に起きた(がマリは忘れてしまった?)出来事を反映していたのかもしれない。
触手に襲われるマリを見てゲラゲラ笑ってしまったが、コマンダーの王子様っぷりとラストの和解シーンが素晴らしい。助けてもらったくせにやっぱり怒っているマリだが、殊勝にも助けが遅れたことを詫びる萩乃に、抱きついて号泣。はじめての握手では暴走して首を絞めてしまい、次の握手では頭から水をぶっかけられ、その次にもパニックを起こしたマリをなだめようとして逆に思わぬダメージを食らった萩乃ゆえ、こうしてふつうに触れ合えるのははじめてのこと。抱きつかれて一瞬、驚いたように目をみはるが、すぐにマリの背中に手を置いて「あったかい……」とつぶやく。いささか変態チックに聞こえたのはおいといて、経緯を考えれば感慨深いものがある。
ところで、コマンダーがパイロットスーツを引っぺがしたら下に制服を着ていたという場面で、「明智小五郎だぁ!」と喜んでしまった私。スカパーか何かで見たんだけど、変装をベリベリって剥がすシーンがもうね、超カッコいいの。変装を引っぺがした下には、ビシッとスーツ着てんの。
さて、触手だの戦艦だの物騒なモノが続々登場しているとはいえ、現在の基調は「楽しい学園生活編」だと思う。緩慢に流れていく平和な時間、新しい友達と気になるあの子と将来の夢。すでに明らかな今後、未曾有の危機を迎える世界を思えば、鬱展開の種をまいているようにも見えるが……
今後の展開を考えるなら、まずは萩乃が今回の件で窮地に陥ることは間違いないだろう。だが、萩乃が現在調査中と報告したにもかかわらず、なんの相談もなくマリの捕獲命令を出すシバリエルもどうなのって感じだ。むしろ萩乃を試したかったのかもしれない。
エミルフォースドライブの影響を受けない、特殊な能力もしくは体質をそなえているらしいマリ。これが神隠島事件の原因もしくは結果と関連づけられるのは間違いないと思われるが、この辺りの真相、それから萩乃の、同胞に対する背信こそが展開のカギを握りそう。
BLUE DROP 〜天使達の戯曲〜 第3話 「Datura」 感想

脚本:渡邊大輔
絵コンテ:長尾粛/大倉雅彦
演出:長尾粛
作画監督:井上善克
コマンダーこと萩乃のコスチュームが尋常でなくエロい。エロすぎ。倒錯しすぎ。
とりあえず、あんなエロコス誰が考えたんだよって話だが、あれこそ間違いなくキング・オブ・フェチの手になる仕事。とくに制帽とハイレグの犯罪的な対比に、目が釘づけである。あとヘソ。ヘソフェチ悶死。
セーラー服にプリーツスカートという女子高生の制服、あれも少女に水兵さんの制服を着せているというので、「グロテスクな倒錯趣味」とかお怒りの向きもあるそうだが、イギリス人あたりの目にはこのコマンダースーツのごとく奇異に映っていたりするのかもしれない。そう思えば、コマンダーの軍装に頬を染めるツバエルにも親しみを持てようというもの。
突然苦しみだし、悪夢にうなされる萩乃のために、眠れない一夜を過ごしたマリ。翌朝も、ふたりの微妙な軋轢はつづく。
しかし、呼び出しに応じない戦艦ブルーに対し、1番艦ノヴァールが接触を図ってくる。やむなく会合に応じることに決め、口実をもうけて学園を離れる萩乃。一日中、その不在が気にかかってならないマリ。
一方で、ノヴァールの乗員であるアザナエルは、みずからの恋人でありブルーの乗員であったオノミルの身を案じ、いらだちを隠せないでいた。会合地点で待ちうけるノヴァールの前に、ブルーが浮上、その姿をあらわす。
ラスト。夜の海、戦艦、月下のランデヴーとは美しい。同じ月の光に照らされながら、寮でまんじりともできずに横になっているマリの姿を、最後に映して締める辺りも。
マリは萩乃の何が、そんなに気になっているのだろうか。過去に浅からぬ因縁がありそうというのは視聴者からすれば明らかなので、自分でもよくわからないうちに意識してしまうのだとしても、出会ってすぐに首を絞められたりと最悪の印象を持ってしまった相手だから、素直に打ち解けられない、訊きたいことがあっても訊けない。とはいえ食ってかかるばかりでは埒があかないので、この辺の距離を埋める出来事がそろそろ欲しいところだ。
今のじれったい関係も、個人的には見ていて楽しいけど。「わけわかんないしムカツクのに気になる!」っていう分かりやすいマリの行動にはニヤニヤしてしまう。
何か危なっかしいというか、どこまで狙っているのかがよくわからない、つかみどころがないという印象は変わらず。基本的に手堅く進行しつつ、突発的ギャグや妙なエロスでいきなり調子を外されるというか……
にしても、異星人たちの存在によって良い具合にカオスってきた。とくにアザナエル×オノミルの異星人バカップルには、「アルメってホントに女同士でうんたらかんたらなんだなぁ」と感心させられた次第。「ア・ザ・ナ・エ・ル♪ キャハッ」でモニター越しにチュウて……この変なノリが不覚にもツボった。
異星人にはいわくいいがたい萌えを感じる。いってみれば、地球を侵略しにきた敵という不気味さと、その外見や仕草の妙な可愛さとが生み出すチグハグ感。ツバエルとオノミルなんて、いつ変な語尾をつけてしゃべりだしても不思議はないような雰囲気じゃないか?
BLUE DROP 〜天使達の戯曲〜 第2話 「Lavandula」 感想

脚本:高橋ナツコ
絵コンテ:福田道生
演出:友田政晴
作画監督:蘇武裕子
面白かった。単に前回の続きから始めるのではなく、マリの萩乃への疑念はいったん留保しつつ、マリの転入初日の出来事を通して今後への伏線を張っていく。謎が謎をよんでいるという印象で、作品の性質上ゴールは見えているが、そこへいたる道筋が読めないので非常に妄想を刺激される。
このまま、きわどいバランスのうえにうまく乗っかっていってくれるといいな。
マリの転入初日。頑なな態度で、さっそく周囲から浮いてしまうマリだが、何かと世話を焼いてくれるみち子とは打ち解けはじめている。一緒の帰り道で、自分が五年前に起きた神隠島事件の唯一の生き残りであること、しかし事件のショックで記憶を失ってしまったことなどを打ち明ける。一方で隣の席になってしまった萩乃には、前日の経緯もあって反発するが、実のところはその存在が気になって仕方がない様子。
萩乃のほうでもそれとなくマリを気にかけているが、そこにはマリが知らない過去の因縁があるようだ。萩乃は、戦艦の修復にあたっているらしいツバエルと絶えず連絡をとっている。だが、神隠島事件と深く関連するらしいその因縁のためか、復旧のメドがたったという報せにもかかわらず、活動再開を先送りしてしまう。
萩乃の希望により、マリは寮でも萩乃と同室にされてしまう。「こうなったら化けの皮をはがしてやる!」と意気込むも、夜になり、本来なら見えるはずのないモノの影──萩乃のもとへやってきたツバエル──を目撃してパニックに陥る。なだめようとした萩乃がその肩に触れると、触れた箇所から強い光が発し、萩乃のほうが倒れて苦しみだしてしまう。
一方、マリたちのクラス担任であるはずの裕子は、どことも知れない場所で、神隠島事件に関する報告を行っていた。津波が原因で壊滅、島民のほぼ全員が死亡したとされるその事件。しかし島民の半数にあたる400人余りが、じつは津波に襲われる以前に殺されていたのだという……
ラストの、「内閣安全調査室調査官」なる肩書きをもつらしい菅原先生の特別講義が、ホラーじみていてとても不気味なのだが。講義の内容も同じくらいに気味が悪く、400人余りもの人が殺害されていたといえばもはや殺戮とよぶべきだろうが、写真の他殺体にはなんで出刃包丁が刺さっているのか。戦艦に乗ってやってきた異星人による「薙ぎ払え!」的な所業にしてはまた異様な……津波に襲われるまで、神隠島では何が起きていたのだろうか?
ところで、神隠島はカミオキジマと読むのか。カミカクシジマと読んでいたおばかさんが私だけではないと信じたい。にしても、このネーミングには何か特別な意味があるのだろうか?
超然とふるまう萩乃からも「見ていて飽きない」と評されるマリ。目まぐるしく変わる表情が可愛くて、確かに目がはなせないキャラだ。多分に萩乃を意識しすぎなことによる、ツンデレと情緒不安定の相乗効果で、笑ったと思えばもう怒りだしていたりと忙しそう。
厚い人望を巧みに活用する萩乃によって、同じクラスの隣の席のうえに、寮でまで同室にされて外堀を埋められてしまった今、マリが心配すべきなのは命の危険より貞操だろうという気がしないでもない。萩乃いわく「いろいろと面倒を見てあげたいから」ってのがすごく妄想をかきたてられるんですけど、アルメは女同士でどうのこうのとかそういうのはマリにはまだ早すぎっぽいです!
そういえば授業中、マリが萩乃の横顔をぼんやりと──教師に当てられても気づかないほど熱心に──見つめている場面で、女子生徒が音読しているのが、上田秋成 『雨月物語』の一篇 「菊花の約」。なんというチョイス。
三島由紀夫が愛読していたともいわれるこの物語。「命を捨てても友情と信義を守る」といった重い筋書きのお話であるが、そのじつ同性間──「"菊"花の約(ちぎり)」という題から連想されるように男同士だが──の強い絆、いってしまえば同性愛を描いた物語なのだともいわれる。確かに、ふつうに読むだけではそうとわからないし、古典の授業でとりあげられても不思議はないというので選ばれた題材なんだろうけどね。
「交はりは軽薄の人と結ぶことなかれ」にはじまるその一篇。思うに、これがもしマリと萩乃との関係について暗示しているのだとしたら、同性愛はさておき、いろいろと深読みの余地が生まれるだろう。マリが、出会った瞬間から萩乃に惹かれているように見えるのにも、鳥とたわむれる姿が美しかったからという以上の隠された理由があるのかもしれない。これは飛躍しすぎか。
BLUE DROP 〜天使達の戯曲〜 第1話 「Hydrangea」 感想

脚本:高橋ナツコ
絵コンテ・演出:大倉雅彦
演出:羽生尚靖
作画監督:竹田逸子
その掴みどころのなさ、得体の知れなさに惹かれる第一話だ。異質なものが雑居する、ちぐはぐな雰囲気がとても楽しい。
本作は原作の漫画よりも過去の出来事を描いているということだったので、私は漫画を買ったが読んでいない。チラ見しただけで我慢した。実際にアニメを見てみて、百合的には安牌と踏んだのだが、意外に硬派のSF作品だったりするのか? いずれにせよ、毛色の一風変わった作品になりそうでワクワクしている。
1クールというのが少し残念だが、全13話という限られた時間の中で、スケールの大きな世界観をどう感じさせてくれるかに期待したいと思う。
16歳にして初めての学校生活──その最初の一日にして、踏んだり蹴ったりの目にあう不憫な主人公・マリに、涙もとい笑いがとまらない。
5年前に両親と記憶とを失い、ひきとられた祖母からも今は見放されたように感じているマリ。その強気ゆえか幼さゆえにか、周囲から差しのべられる手をはねつけ威嚇することでしか、やり場のない感情を表せないでいるかのよう。
そんな中、学園へむかう車中で見かけた、海辺で鳥とたわむれていた美しい少女と学寮にて再会し、マリははじめて笑顔を見せる。だがそれもつかの間、目を青く光らせたその少女・萩乃から急に首を絞められ、ショックを受けて部屋を飛び出す。しまいには寮の歓迎会で、萩乃の取り巻きたちと乱闘騒ぎまで起こしてしまい、さしあたって腫れもの扱い確定だろう。
しかしそれらも、夜にこっそりと寮をぬけだしていく萩乃を尾行した先での「未知との遭遇」にくらべれば、本当に些細なことでしかなかった……
実際、第一話としてはとても堅実なつくりだ。公式サイトから読みとれるストーリーとのギャップもあって、かえって新鮮だった。
冒頭で主人公の背景を示唆し、主要キャラの面々を順に紹介しつつ、その人となりもそれとなく示していく。序盤と中盤とラストに見せ場をもってきて、最後にたぶん本来のOPを流すことをもって始まりの終わりとする……美少女が人の首を絞めたり、鳥や巨大な戦艦を呼び寄せたりといった展開のインパクトにおそらく印象をさらわれてしまいがちだろうが、ていねいな導入になりえていたのではないだろうか。
学校生活がはじめてというだけあって、世渡り以前の野蛮な主人公にむしろ好感をもった。粗野というより端的に幼いという印象なのだが、つんけんしていても隙だらけなのが憎めない。そんな子がこれから萩乃様に、沢城ボイスで優しく時には容赦なく言葉責めされつつ調教されていくんだと想像すると、今からワクワクがとまらないじゃないですか。真の教育とはかくあるべし。
その二人がはじめて出会う海辺の場面が、またなんとも美しい。白いアジサシが海の上をまっすぐに突っ切っていき、それに目を奪われたマリの視線がやがてアジサシの群れへ、それから群れの中にたたずむ萩乃へと引きつけられていく。
それはマリにとって一目で心惹かれる光景だったが、再会した当の萩乃からいきなり首を絞められるという事件によって、最悪のものに塗りかえられてしまう。しかしマリには申し訳ないが、萩乃が手でゆっくりとマリの顔の輪郭をなぞり、顔を寄せ、いきなり首を絞め上げながらベッドに押し倒してのしかかっていくというあの一連の画面では、特殊な性癖の人に犯されているようにしか見えないのだった。あのまま普通にキスされるよりエロいなぁと思ってしまったんだけど、せめて同意を得てからにしてほしいよね。うん。
二人が自己紹介しあって握手をした瞬間に、萩乃の脳裏に閃いて彼女を衝き動かした過去のイメージ。あれこそが、マリとの関係の鍵になりそうだ。だが、あの局面に萩乃が絡んでいたとしたら、マリの両親の死にも責任を負っているということになりかねず、話がこじれそうでもある。
ところでどうにも見過ごせないのが、あの奥ゆかしいスカート丈! 絶滅種といわれるスケバンっぽい人までいるので、舞台は昭和か?
公式サイトの年表によると1999年とされているが、そもそもあれを見る限り、現実との整合性を気にすること自体がナンセンスといえる。どこか懐かしい風景の中にゴージャスな学園が屹立し、さらには宇宙戦艦までも出現する、その奇妙な世界観をこそ楽しむべきなのだろう。







